建築家の仲間と話をしていると理論の重要性を感じる。
私の大学は設計か論文のどちらかを選択したのだが、
設計と論文の両方というのが多いのだと知った。
「描いてなんぼ」というのは確かにある。
しかし、理論がないと弱い。
頭が先か、手が先かというと、どちらもある。
時と場合によって、どちらから入るのか使い分けられれば
より強いと思う。
大学卒業後は15年以上店舗などのデザインばかりをしていた。
デザインは確実に手が先である。
もちろん手を動かすためにコンセプトを立てたり、
現状分析や課題の抽出、時代性、立地、
ターゲット、マーケティング、などの思考はする。
しかし、デザインの世界では、
手を動かしながら考えることのほうが重要だったりする。
これを「手で考える」と言ったりもする。
「手で考える」という言葉は好きだ。
もうひとつ
「理屈抜きで美しい」という言い方も共感できることがよくある。
大学での建築設計実習は理論が先であったので
社会に出たとたん「頭で考える前に何枚でも描いてみろ」
というようなデザイン業界の雰囲気には相当に苦労して訓練した。
しかし、「手で考える」ことを続けているうちに、
知らずしらず、理論がカバンからこぼれていたことに気付かなかった。
もちろん手で考える事も大切である。
模型を何度も作って検討していく中で次の展開を考える。
しかし、検証行為の前提となる、強い問題提起や理論が
どことなく薄れて来ているような気がして来た。
原点に戻って名論文を読んでみようと思う。
「住宅論」 篠原一男